G7・G20サミット特集 2025

6月にカナダのカナナスキスでG7サミットが開催されました。11月には南アフリカのヨハネスブルグでG20サミットが開催されます。複雑化する国際情勢の中、G7は地球規模課題への率先した取り組みとともに、グローバル・サウスとの連携の役割が改めて問われています。また、アフリカ大陸で初開催となるG20では、多様な国々の立場や視点を踏まえた議論が期待されています。
本特集ページでは、持続可能性の議論に関する主要な動向や注目すべきポイント、会合の成果に関する解説、関連するIGESの出版物などをご紹介します。

新着情報

2025年7月9日

関連出版物

T20のステートメント が公表されました。

G7(Group of 7)は、フランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダの7カ国と欧州連合(EU)から構成され、サミット(首脳会合)のほかに、特定の分野に関する大臣会合を毎年開催しています。
  2025年のG7はカナダが議長国を務め、6月16日~17日にカナダ西部のカナナスキスでサミットが開催されました。議長国カナダのカーニー首相のもと、様々な分野の議論が交わされ、AIをめぐる協力や重要鉱物のサプライチェーンの構築、山火事への対応といった分野ごとに成果文書を発表して閉幕しました。

エンゲージメント・グループの役割

G7には、サミットと大臣会合の他に、G7 政府から独立した様々な分野のステークホルダー(エンゲージメント・グループ)が提言(コミュニケや声明など)を取りまとめています。B7(ビジネス)、C7(市民社会)、L7(労働組合)、S7(科学)、T7(シンクタンク)、W7(女性)、Y7(若者)の7つのグループの提言はサミット・大臣会合のコミュニケにも反映されています。気候変動対策や持続可能な開発目標(SDGs)の達成など、社会にダイナミックな変革を起こす上でエンゲージメント・グループの役割の重要性が高まっています。T7には毎年、複数のIGES研究員が提言に関わっており、今年もT7のポリシーブリーフの執筆に貢献しています。

G20(Group of 20)は、G7加盟国(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国)に加え、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中華人民共和国、インド、インドネシア、大韓民国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、及び欧州連合(EU)とアフリカ連合(AU)が加盟したグループです。G20は各国のそれぞれの分野の大臣が一堂に会し、様々な課題について話し合う重要な場となっています。
  2025年の議長国は南アフリカが務めています。11月22日から23日にかけてヨハネスブルグで開催されるG20サミットに先駆け、9月26日にG20エネルギー移行大臣会合が、そして10月9日にG20気候・環境大臣会合が開催される予定です。

エンゲージメント・グループの役割

G7同様、G20のプロセスにおいても、各国のステークホルダーの代表によって構成されるエンゲージメント・グループがG20の議論に向けた政策提言を行っています。エンゲージメント・グループには、B20(ビジネス)、C20(市民社会)、SU20(イノベーション、起業、協働)、L20(労働組合)、O20(海洋)、P20(国会)、S20(科学)、SAI20(最高監査機関)、J20(最高裁判所)、T20(シンクタンク)、U20(都市)、W20(女性)、Y20(若者)といった様々なものがあります。
本年のT20コミュニケはこちら

研究者の視点


岡野 直幸
IGES フェロー

「気候変動とエネルギー安全保障のリスクについてT7ポリシーブリーフを執筆し、G7へ政策提言を行いました」

T7(Think7)は、シンクタンクが研究成果をもとにG7に対して政策提言を行うエンゲージメントグループです。今回は、IGESが実施しているアジア太平洋気候安全保障事業(APCS)の成果をもとに、ドイツのシンクタンクであるadelphi、及びパキスタンの研究機関であるManzil Pakistanとの共同で提言を行いました。T7では、例年、議長国の意向を反映してテーマが設定されますが、今年は、変革をもたらす技術(AIと量子技術)、グローバル経済のデジタル化、環境・エネルギー・持続可能な開発、およびグローバルな平和と安全保障の4つがテーマとして設定されました。私たちの「未来の安全を確保する:気候変動とエネルギー安全保障のリスクおよびG7の役割」は、環境・エネルギー・持続可能な開発への提言で、主要なメッセージは以下のとおりです。

  • 気候変動は、G7を含む世界中で、特に脆弱な地域において、生計の崩壊や移住、食料・水資源の不安定化、資源競争といった間接的な経路を通じて、国家の安全保障と人間の安全保障を脅かしています。
  • G7は、エネルギー安全保障の必要性とグローバルな気候目標を調和させる必要があり、重要な鉱物資源のサプライチェーンを確保しつつ、エネルギー転換と脱炭素化を加速化する必要があります。
  • 重要鉱物は、その分布が不均衡で集中しているため地政学的な関心が極めて高く、G7は、外交関係と貿易関係を強化し、地政学的リスクを軽減しつつ、世界規模での持続可能な採掘実践を促進する役割があります。
  • G7は、グローバル・サウスに対する気候正義のコミットメントを履行し、多国間主義と国際的な連帯を強化する必要があります。

 

アジア太平洋気候安全保障事業では、エネルギー、食料、人の強制移住など、気候変動に関する多様なリスクを研究しています。今回の提言では、この事業で得られた知見を踏まえて、グローバルサウスの気候変動脆弱性に対処するにあたってのG7の役割として特にエネルギー安全保障と重要鉱物の偏在などがもたらす地政学的なリスクに対応すべきことを主張しました。これは、従来の気候変動の緩和・適応の取り組みでは必ずしも十分に取り扱われてこなかった点で、気候行動の強化と持続可能な発展の実現には欠かせない観点と考えています。今回私たちの提言が、多くの政策担当者の目にとまり、実際の行動に繋がることを期待します。


豊島 淳子
生物多様性と
生態系サービス
リサーチマネージャー

「プラスチック条約策定に向けた国際的な議論とG20の役割」

プラスチック汚染に関する政府間交渉委員会(INC)において、プラスチック汚染に関する条約[DS1] の策定に向けた議論が進められています。海洋プラスチック汚染は2025年10月に開催されるG20環境・気候持続可能性大臣会合の主要な議題の一つとなることが予想されます。2019年には大阪で開催されたG20サミットで、2050年までに海洋プラスチックごみの追加的な汚染をゼロにする「大阪ブルーオーシャンビジョン」が採択されました。

プラスチック汚染は、それが発生する場所から見て大きく陸域から発生するものと海洋上で発生するもの[t2] に分けられます。後者は、主に船舶から投棄されるプラスチックごみや、海洋に流出してしまった漁網・ローブ・浮きなどの漁具です。海中に放置された漁具は、海岸に漂着して景観を損なう、航行する船のスクリューなどに絡んで事故につながる、海中に浮遊したまま魚を捕獲して(「ゴーストフィッシング」と呼ばれます。)漁業資源を減少させる、あるいはウミガメ・海鳥をはじめとする希少種を含む海生生物に危害を加えるなど、様々な悪影響を与えます[1][2]。海洋起源のごみに対しては、船舶による汚染の防止のための国際条約(International Convention for the Prevention of Pollution from ShipsまたはMARPOL)によって規制されており、漁具についても、使用者を明確にするマーキングの義務化などの対策が検討されていますが、陸域起源のごみに比べて対策が遅れている印象があります。

しかし、INCの議論を見ても、海洋起源を含むプラスチック汚染防止の規制について国際社会の足並みが揃っているとは言えず、G20の中でどのように意見の統一を図っていくか、さらに、「大阪ブルーオーシャンビジョン」のような取り組みに多くの国を巻き込めるかも、今後の課題であると思われます。

G20の2025年の議長国である南アフリカ共和国は、重要な海運ルートの要所であると同時に、海洋汚染対策にも積極的に取り組んでいます。同国では、2025年初めに、海洋汚染に関する法律が修正され、海洋を汚染した場合の罰金の増額など、規制がより強化されました。2023年10月に中東で起こった軍事衝突によりスエズ運河が通行できなくなって以来、南アフリカ沖(喜望峰)を回るルートの船舶の運航が急増し、こうした船舶からの汚染リスクが増大したことも、このような動きに関係していると考えられます。G20環境・気候持続可能性大臣会合でも、議長国のリーダーシップにより、海洋プラスチックごみを含む環境汚染防止の強化に向けた実質的な議論が進展することを期待しています。

[1] prsp_020_2021_toyoshima.pdf
[2] ゴーストギアレポート++++.indd

関連出版物

ポリシーレポート
This report is the third compilation report on policies and measures with regards to marine plastics litter taken / to be taken by the participating countries, regions and organizations. This comprehensive report was produced under the responsibility of the Ministry of Ecological Transition, Government of Italy, with the support of the Ministry of...

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「気候変動に強靭な開発」に向けた適応策の推進

パリ協定の下で平均気温上昇を1.5℃以内に抑えるための対策を進めていますが、気候変動の影響が一層顕著になる中、資金や対策の不足が続いています。 特に影響を受けやすい途上国においては、適応策のニーズと適応策への資金フローとの間には大きなギャップがあり、事前投資、気候変動対策と持続可能な開発を両立させる「気候変動に強靭な開発」を進めることにより影響を縮小することが必要です。また、パリ協定の実施、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた相互の連携強化が不可欠であり、気候変動、生物多様性...

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